私の異様な執着を打ち明けた相手はただ一人であった。
が、それを聞いている表情には、私の吃音をききとろうと努力する人の、見慣れた焦燥感があるだけだった。
私はこういう顔にぶつかる。
大切な秘密の告白の場合も、美の上ずった感動を訴える場合も、自分の内臓をとりだしてみせるような場合も、私のぶつかるのはこういう顔だ。
人間はふつうこんな顔をしてみせるものではない。
その顔は申し分のない忠実さで、私の滑稽な焦燥感をそのままに真似、いわば私の怖ろしい鏡のようになっていた。
どんなに美しい顔でも、そういうときは、私とそっくりの醜さに変貌するのだ。
それを見たとたん、私が表現しようと思う大切なものは、瓦にひとしい無価値なものに墜ちてしまう。
三島由紀夫/『金閣寺』より抜粋
が、それを聞いている表情には、私の吃音をききとろうと努力する人の、見慣れた焦燥感があるだけだった。
私はこういう顔にぶつかる。
大切な秘密の告白の場合も、美の上ずった感動を訴える場合も、自分の内臓をとりだしてみせるような場合も、私のぶつかるのはこういう顔だ。
人間はふつうこんな顔をしてみせるものではない。
その顔は申し分のない忠実さで、私の滑稽な焦燥感をそのままに真似、いわば私の怖ろしい鏡のようになっていた。
どんなに美しい顔でも、そういうときは、私とそっくりの醜さに変貌するのだ。
それを見たとたん、私が表現しようと思う大切なものは、瓦にひとしい無価値なものに墜ちてしまう。
三島由紀夫/『金閣寺』より抜粋
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